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TOP住まいづくり情報一覧お住まい訪問記> Vol.038 今帰仁村・鈴木さん宅 
   
 
2010.08.02 UP
設計:アトリエ・ネロ

室内から南側の庭を望む。掃き出し窓を開けると家の中と庭がつながります。
北側の森を望む。手作りのくんせい釜(写真中央)と菜園があります。遠くに海が望めます。
新潟県に住んでいた鈴木さんご夫婦は、ご主人の隆夫さんが定年退職する年を目標に「移住計画」を考えていました。
単身赴任で地方に行くことも多く、一緒に住んでいてもあまり休みも取れず、帰りも遅かったという隆夫さん。ずっと家族そろって過ごす時間が少なかったのだそうです。

「そんな生活が続いていたから、夫が退職したら一緒に過ごせる場所をつくりたいと思っていたんです」と奥さまのひろ子さん。

ご夫婦で「遠くへ行きたい願望」を持っていたそうで、結婚して沖縄に住んでいる娘さんのもとを数回訪れているうちに「沖縄に住もう!」となったのだそう。

「でも、具体的に何かを考えていたわけじゃなくて、ぼんやり思っていた程度。退職まであと2年となったとき、『このままじゃ計画は進まない、実現のためにも動かなくちゃ』と思って、土地を探し始めたんです」。
「新しく住む場所は、そこそこ田舎で、畑とかガーデニングをやりたいと思っていた」と話すひろ子さんの希望もあり、今帰仁村内の分譲地に出会います。

「草がボーボーで木が生い茂っていて、おまけに山道を通ってくるような場所で(笑)。初めて見たときは『ここに家が建つのかな?』と思ったし、『ホントにここに住むの?ハブ出るよ?』って言われたんですよ。でも、ここがいいなと思って」。

予算との兼ね合いなども考えながら、「未完成でもいい」、そんな思いを持って、流れに逆らわず、いろいろな出会いや自分たちに起こる出来事を受け入れてきたと話す鈴木さんご夫婦。
その結果として、2009年5月に完成した新しい家は、それまで過ごしてきた時を経て、ご夫婦の熟成された時間を過ごす、新たな居場所になりました。



鈴木さん宅は、やんばるの森のそばに建つ平屋建ての家。区画整理された分譲地内にあっても、遠くに海を望み、森の緑を近くに感じる場所にあります。

「リゾート地のコテージのような平屋建て、土間のある空間で森が見えること、前庭を広くとって南国風の庭づくりをしたい」という希望を受けて住宅が建てられました。

敷地の南側が道路に面し、北側には緑の森。駐車スペースと前庭から続くテラスは、深い庇のあるスペースになりました。
住宅内部はほぼワンルームの空間で、室内はすべて琉球石灰岩を用いた土間の床。掃き出しの窓からは南北に抜ける風が気持ちよく流れます。

「南国風の庭づくりをしたい」と話していた前庭は、いろいろな植物たちと、海で拾ったサンゴや流木、陶器のかけら、レンガブロックなどを自由に生かしてガーデニングが進んでいます。

内部は、味わいのある家具や手作りした棚などと、床のかわりに設けられた畳一枚分の大きさの可動式床が2つ。
これがベッドになったりベンチになったり、2つ並べて畳間にしたり、収納箱にもなっていて、空間を多目的に使うのに大活躍しています。

「沖縄なら、どんなに寒くても凍死したりしない。思い切って全部土間の空間にしてよかった。普段は並べて眠るけど、イビキがうるさいなと思ったら、たまには離してみたり。動かせることはいいことです(笑)」。

家の中にあるタンスや長火鉢など、ほとんどのモノにキャスターが取り付けられていて、必要に応じて家具を動かせるようにもなっています。

「以前住んでいた家には使わないモノがいっぱいあって、引っ越しの作業中にどんどん捨てていくことに寂しい気持ちになったりしました。毎日使うものだけあればいいという生活を、ここではしようと思って。何でも決め付けずに自由にね」と話す鈴木さんご夫婦です。

2009年5月 完成したばかりのころ
2009年9月 4カ月たって早くも庭が緑であふれました。
2009年12月 アプローチも整ってきました。壁面の緑も育ちました。
2010年4月 屋上へ向かう階段、手すりができました。
 
↑施工中のころ。家族総出でしっくい塗りを体験。壁から天井まで、しっかり塗り上げられました。
鈴木さん宅にある、使い込まれて味わいのある家具は、互いの祖父母や両親が使っていたものに手を加えたもの。いろいろなもの一つひとつについて尋ねると、モノとの思い出話もたくさん聞けそうな、そんな雰囲気が漂っています。

「施工中は壁と天井のしっくい塗りを家族総出でやりました。塗った場所の担当ごとに仕上がり具合が違っていて、誰が塗ったのかがすぐわかる。作業はとても大変だったけど、何年たっても家族がそろった時はその話ができるから、やってよかったなと思います」。

普段の暮らしの中で使うモノたちも、家そのものも、家族の思い出が刻み込まれているようです。
「新潟では10月〜4月までの間は冬期間。植物も枯れちゃうし、庭を楽しもうと思ってもなかなかできませんでした。沖縄は一年中植物が枯れないし、冬でもたくさん花が咲く。手をかければどんどん良くなっていくから楽しいんです」。

庭や菜園づくりのほか、くんせい釜や屋上の手すり、階段、パーゴラやテーブルセットなど、大がかりなDIYも行いながら日々家を成長させている鈴木さんご夫婦。自分たちで手を加えて住まいをつくっていく楽しさを心から喜んでいる様子が伝わってきます。

「今までお互い自由にやってきたし、生活のリズムも違うので、ずっと一緒にいるようになるとケンカしたりしないか、少し心配でもあったんですよ。でもワンルームの土間の家は、家の中や庭で別々のことをしていても一緒に居る感じがするし、適度にお互いを邪魔しなくていい。何よりも、やることがたくさんあるというのが夫婦円満の秘訣になっているよう(笑)」。穏やかに笑いながら話すひろ子さんの横で「家は最初で完成させずに、住みながら手間をかけて少しずつ作っていくほうが楽しくていいですよ」と隆夫さんが笑います。

訪れた日、北側の森ではイジュの木々に白い花が満開でした。

「こんな近くにイジュの木がたくさんあったなんてね。今年になって気がつきました。ここの暮らしに慣れて、周りに目がいくゆとりも生まれてきたのかも」。

完成から1年が過ぎ、2人で増やした緑に覆われて建物の形はクッキリとは見えなくなりましたが、鈴木さんご夫婦のカタチが少しずつ浮かび上がってきているように思う、温かさがいっぱいの住まいに育っているようです。

   

鈴木さん宅・DATA

所在地

今帰仁村
設 計 アトリエ・ネロ (根路銘安史  水上浩一)
敷地面積 325.43 (106.6坪)
建築面積 107.40 (32.5坪)
延床面積 107.40 (32.5坪)
構 造 補強コンクリートブロック造
用途地域 無指定(都市計画区域外)
施 工  建築/(有)友建産業(添石良平)  電気・水道/(有)きみ山工業(喜屋武清) テーブル・コンロカウンター/まっくる屋工房(伊礼範雄)  シンク/LITTAI (仲地研二)

建築士・根路銘 安史さん 談
和室のあるプランなど、いくつか提案した中で、鈴木さんの「沖縄なら凍死しないでしょ」の一言で、すべて土間の空間にすることに決まりました。少しずつつくっていきたいという希望もあり、建築であまり造り込みすぎないように配慮しました。

建物はコストを抑えるため、補強コンクリートブロック造で梁を入れずに壁とスラブのみとし、開口は床から天井高まで取り、空気の流れを促すよう工夫しています。屋上には芝を張って暑さ対策を施したほか、雨水タンクの設置や外壁周りの緑化の提案など、植物を育てやすい環境づくりにも配慮しました。

「自分たちで作っていきたい」と話す人は増えましたが、持っているDIYの技術や、作っていく意識など、それぞれで「できる」度合いは違います。その人の度合いを見極めながら、どこまで建築で造り込むかも考えます。
鈴木さんたちの場合、しっくい塗りの作業を通して、かなり高レベルな手作りができる方たちだと安心しました。
鈴木さん宅の成長には、驚くばかりです。鈴木さんたちの家へ対する愛着や、ご夫婦で作業する楽しさが「いい住まい」をつくり上げているのだと思います。

2010年5月の住宅外観

写真撮影:フォトアートたかのアトリエ・ネロ


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